からだのブログ

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「君に届け」アニメ化

11月 14th, 2009 · No Comments · culture

アニメ「君に届け」を毎週楽しみに見ているわけだが、ずっと見てきてやっぱりいい作品だと思う。

本作をアニメで知ってから原作も読んだけど、サイドストーリー的なところに入っていったところはともかく、本当に面白い。爽子の心の成長が丁寧に描かれていて、彼女を(いないけど)自分の娘か何かのように愛おしく感じる。

それと同時に思ったことが、心理描写の多い作品ってアニメだと今ひとつだってことだ。だからと言っても、中の人の声とか演技とか、全然嫌いじゃない。むしろ、前も言ったとおり能登は大好きだ。原作レイプとかそういうのもない。では、何が問題なのか。

一言で言うと心理描写が多すぎるってことになる。そりゃ心理描写はこの作品では重要だし、原作ファンの期待もあるだろうから簡単に削ることもできないだろう。そういうことがあってかどうかは知らんが、原作での心理描写のほとんどは、アニメでも能登の独白として表現されている。

しかし、ここで問題が発生する。音声になると情報がシーケンシャルに、1スレッドでしか処理されないっていう問題だ。登場人物の心の内側と実際の発言とが同時並行的に提示することが難しいのだ。

ところが、原作では漫画というメディアの良さを最大限に生かして、心の内側と実際の発言とが同時に提示される。そうすることで、ほぼ同時のタイミングでその二つの要素が処理されることになる。そして、心の内側は背景のようにそこにあって、複数の思いが同時並行的に頭の中で処理されていく。従って、コンテンツの脳内での処理のスループットが上がる。要するに感情移入しやすいのだ。

漫画というメディアのこうした特長を生かした作品を別のメディアに持っていくと、先に述べたような問題が起こるわけだ。これは、3車線の道路が交通規制で1車線のみ通行可能になるような、心理的渋滞を巻き起こすことになる。

ここまでのところ、原作漫画もアニメもほんとうにいい出来だと思う。しかし、メディア自体の差異を乗り越えるのってなかなか難しいことなんだなあ、と結論が何十年も前に出ていることを実感するのであった。いや、能登は悪くないよ! がんばってるよ! うん。

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